「宅建士の独立にはいくらかかるの?」「独立する方法やメリット・デメリットが知りたい」
などと、宅建士の独立開業について気になっていませんか?
宅建士として独立するためには宅建士の資格取得の費用や保証金、事務所の費用などがかかり、トータル費用は300~400万円が相場と言われています。一方で、事業に成功すれば年収1,000万円以上の高収入を目指せるのがメリットです。 こちらの記事では宅建士の独立に必要な資格や費用、メリット・デメリット、おすすめのダブルライセンスまで紹介しています。
宅建士として独立開業するには2つの資格が必要
宅建士として独立開業するためには、以下2つの資格が必要です。
- 宅建士(宅地建物取引士)
- 宅地建物取引業免許
宅建士は試験に合格することで取得できる資格です。宅地建物取引業免許は、都道府県知事または国土交通大臣に申請して与えられる資格で、申請には手数料がかかるほか、事務所開設などの用件があります。
そのため、開業前に事務所を開設しておく必要がありますが、自宅の一部を事務所として使用することもできます。
宅建士の独立にかかる費用
宅建士の独立にかかる費用は300~400万円が相場です。主な内訳は次の6種類です。
- 宅建士の勉強代・受験費用・交付費用
- 会社設立費用
- 事務所開設の初期費用
- 営業保証金or弁済業務保証金
- 保証協会の加入金・保証金
- 免許申請の手数料
そのほか、人件費や維持費なども考慮する必要があります。ここからは、上記の費用について詳しく解説します。
1.宅建士の勉強代・受験費用・交付費用
これから宅建士の勉強をはじめる場合に必要な費用は以下の通りです。
- 勉強代:10,000円〜100,000円
- 受験費用:8,200円(令和4年度)
- 登録実務講習:20,000円
- 資格登録手数料:37,000円
- 交付申請手数料:4,500円
独学の場合はテキスト費用のみですが、通信講座やスクールに通う場合は100,000円ほどの費用が必要です。また試験合格後、実務経験が2年未満の方は20,000円の登録実務講習が必要で、資格を登録したり交付申請したりするのにさらに費用がかかります。
2.会社設立費用
宅建士として法人で独立する場合は会社設立費用がかかります。株式会社であれば、収入印紙税・登記・登録免許税などでおよそ20万円〜25万円必要です。
個人として独立することも可能ですが、将来的に事業を営む上で社会的信用を得るために法人として独立する人も少なくありません。
3.事務所開設の初期費用
事務所開設時に必要な費用には以下があります。
- 物件の確保(敷金・礼金・前家賃など):100万円〜300万円
- オフィス用品(デスク・パソコンなど):20万円~100万円
- 電話・インターネット開設:5~10万円
- 広告作成・Webサイト開設:30〜50万円
特に事務所開設費用が高額で、事務所を法人契約する場合は家賃6〜12ヶ月分が相場と言われています。
4.営業保証金 or 弁済業務保証金
営業保証金または弁済業務保証金が必要です。保証金は顧客の不利益を防止や不動産業界の維持を目的とする宅建業法の制度です。
保証金には2種類あり、営業保証金とは、宅建業者側が単独で供託所に預けておくお金のことで、弁済業務保証制度とは、「宅地建物取引業保証協会」を利用する団体保証のこと言います。
営業保証金制度の金額は1,000万円、保証協会を利用する場合は60万円(弁済業務保証金分担金)かかります。
5.保証協会の加入金・保証金
保証協会に加入する場合は別途、加入金と保証金がかかります。保証協会には2種類あり、それぞれの加入金・保証金は以下の通りです。
加入金 | 保証金 | |
全国宅地建物取引業協会連合会(ハトマーク系) | 200,000円 | 6,000円(年間) |
全日本不動産協会(ウサギマーク系) | 700,000円 | 84,000円(年間) |
ハトマークは会員数約10万人の国内最大の保証協会で、大規模な事業展開が強みで、加入金・保証金も抑えることができます。ウサギマークは会員数約35,000人の協会で、会員同士のネットワークが強みです。
また、保証協会を利用すると営業保証金1,000万円を免除されるほか、物件検索サイト「レインズ」を使えたり、不動産業界の最新情報を受け取ったりできるのがメリットです。
6.免許申請の手数料
宅地建物取引業免許の申請に手数料がかかります。複数の都道府県に事務所を設置する場合は「国土交通大臣」、ひとつの都道府県にのみ事務所を設置する場合は都道府県知事へ申請します。
国土交通大臣は登録免許税として90,000円、都道府県知事は収入証紙代として33,000円が必要です。申請から交付までの期間は1〜2カ月が目安です。
宅建士として独立するまでの流れ
宅建として独立するまでの流れは次の通りです。
- 宅建士の資格を取得する
- 資格登録する・宅建士証を交付する
- 事務所を構える
- 宅地建物取引業免許を取得する
- 営業保証金を供託する
それぞれ順を追って解説します。
1.宅建士の資格を取得する
まずは宅建士の試験に合格して資格を取得する必要があります。試験科目は主に以下の5分野です。
- 宅建業法
- 権利関係
- 法令上の制限
- 免除科目
- 税・その他
出題は全50問で合格率は15〜17%です。試験は例年10月第3日曜日に実施されており、受験資格に制限がないので誰でも受験することができます。
2.資格登録する・宅建士証を交付する
試験に合格したら資格登録して宅建士証を交付します。試験合格から宅建士として働くまでには以下の手続きが必要です。
- 試験合格
- 登録実務講習(※実務経験2年の場合のみ)
- 資格登録
- 法定講習(※試験合格から1年以上経過した場合のみ)
- 宅建士証交付
- 宅建士の仕事開始
人によっては登録実務講習や法定講習を受ける必要があります。試験に合格しただけでは、宅建士として仕事できないので注意しましょう。
3.事務所を構える
宅建士証の交付まで済ませたら、独立前に事務所を開設する必要があります。宅地建物取引業免許を取得するためには、個人・法人に関係なく事務所の住所の記入が必要なためです。
事務所を構える際、法人として開業する場合は法人登記も必要になります。個人で開業する場合は自宅の一部として申請することは可能ですが、「住居用とは異なる事務所用の出入り口を設ける」などのルールがあるので注意しましょう。
4.宅地建物取引業免許を取得する
次に宅地建物取引業免許を取得します。申請を行うと、都道府県知事または国土交通大臣から免許を与えられます。
はじめて独立開業するという方や個人で独立開業する場合は、事務所の設置は1カ所で都道府県知事に申請するケースがほとんどでしょう。
また、宅地建物取引業免許の取得には「事務所の形態を整えている」「宅建士がいる」などの用件があるので事前に確認しておくことが大切です。
5.営業保証金を供託する
不動産業を営むためには、供託所へ営業保証金を預ける必要があります。ただし、保証協会に入会すれば営業保証金は免除されます。
営業保証金は1,000万円、保証協会の利用に必要な金額(弁済業務保証金分担金)は60万円です。そのため、はじめて宅建士として独立開業する方は、保証協会の利用を選ぶケースが多いでしょう。
宅建士が独立するメリット
宅建士が独立するメリットには以下があります。
- 自分らしく自由な仕事ができる
- 不動産業は在庫を抱えるリスクがない
- 高収入を目指せる
独立すれば組織のルールや規則に縛られないので、自分らしく自由に仕事ができるのがメリットです。営業方法や仲介手数料なども自由に決めることができます。
不動産業は小売業をはじめとした、ほかの業界と比べると在庫を抱えるリスクがありません。個人であれば自宅で開業もできるので、少ない費用で事業をはじめることが可能です。
また、単価が高い業界なので一回の取引にかかる仲介手数料が高額です。さらに不動産業は需要が安定しているので、人によっては高収入を目指せるのも宅建士が独立するメリットと言えます。
宅建士の独立にデメリットはある?独立後の失敗対策4つ
ここまで宅建士の独立のメリットについて紹介しましたが、一方で、独立に失敗すると多額の借金が残るなどのデメリットが考えられます。
ただし、独立後のよくある失敗はいくつかパターンがあります。独立後に失敗しないためには主に次の4つの対策が必要です。
- 無収入の期間があることを念頭に入れる
- 顧客との信頼関係を構築する
- 固定費(家賃や人件費)はできる限り抑える
- 実務経験を積んでおく
それぞれの詳細を解説します。
1.無収入の期間があることを念頭に入れる
無収入の期間があることを念頭に入れておきましょう。
独立に失敗するよくあるパターンが「無収入の期間が長くて事業が続かなかった」というもの。収入が得られない期間には個人差がありますが、独立後の失敗を避けるためには1年間無収入でも暮らせるほど、資金に余裕を持っておくのが理想です。
必要な資金を確保することも必要です。自己資金が不足している場合は、銀行や公的融資制度を利用することもできます。
2.顧客との信頼関係を構築する
顧客との信頼関係を構築するのも、独立後の失敗を避けるポイントです。
不動産取引は単価が高い分、顧客は取引を慎重に行います。独立すると無名の会社を経営するということなので、会社のブランドがない分顧客は取引に不安を抱えます。
そのため、いかに顧客と信頼関係を構築するかが独立成功のカギです。
顧客対応能力を向上させることで住宅を借りたい顧客からの信頼を獲得し、リピートビジネスにつなげることができます。
3.固定費(家賃や人件費)はできる限り抑える
事業を成功させるためには、家賃や人件費などの固定費はできる限り抑えることも大切です。
独立に失敗するパターンとして、張り切って独立した結果、賃料の高い事務所を借りたり過剰に人を雇ったりして資金が回らなくなることがあげられます。
開業前には事業計画をきちんと立て、固定費の見積もりも身の丈に合う予算で考えましょう。
4.実務経験を積んでおく
宅建士の独立に失敗しないために、実務経験を積んでおくことも重要です。
たとえば、宅建士であれば重要事項の説明や契約書の作成などの業務があります。しかし、会社員時代に営業を中心にやっていた人であれば、契約関係の業務など細かい実務能力が身についていないこともあります。
不動産に関する業務に携わり、経験を積むことが大切です。宅地建物取引業者としての実務経験は、業務の質を向上させることができます。
失敗しないために、宅建士として数年実務を積んでから独立しましょう。
宅建士は儲かる?独立後は年収1,000万円を目指せる
宅建士は独立してうまくいけば、年収1,000万円を目指すことができます。
ただし、独立当初は顧客がいないので収入がゼロという可能性も考えられます。会社員の宅建士の平均年収は400〜650万円ほどと言われており、最初の数年は会社員時代の年収を下回ることも珍しくありません。
しかし、独立すれば収入に上限がないので、運営次第では会社員時代よりも高収入を目指すことが可能です。
宅建で独立後、年収を増やすためのポイント
- 集客
開業後は、顧客獲得のための広告宣伝戦略を構築することが必要です。SNSやWebサイト、チラシやポスターなどを活用し、効果的な広告宣伝を行うことが重要です。 - 競争力強化
宅建業界は常に変化していますが最新の情報を収集し、自己研鑽を続けることで業界での競争力を維持することができます。業界団体やセミナーなどに参加し、情報収集を積極的に行いましょう。 - 人脈構築
宅建業務は人とのつながりが非常に重要です。業界関係者や顧客との人脈を構築することで、ビジネスのチャンスや情報を得ることができます。業界団体やコミュニティーに参加し積極的に人脈を広げるようにしましょう。 - 自己管理
独立開業では、仕事とプライベートのバランスが崩れがちです。適度な休憩やリフレッシュを取り入れ、長期的な事業運営ができるように心がけましょう。
宅建士の独立はダブルライセンスで高収入を目指せる!おすすめの資格3選
宅建士としてダブルライセンスで独立開業すると、活躍の場を広げやすいので高収入を目指せます。なぜなら、ほかの宅建士と差別化でき、顧客や高単価の案件を獲得しやすくなるためです。
宅建士と相性のいいおすすめの資格は次の3つです。
- 行政書士
- ファイナンシャルプランナー(FP)
- マンション管理士
それぞれの詳細について解説します。
1.行政書士
行政書士は官公署に提出する書類を代行して作成する国家資格で、言わば町の法律家です。
宅建とのダブルライセンスであれば、不動産業に精通している行政書士ということでアピールでき、顧客の獲得が有利になります。専門性の高い仕事も任せてもらえるでしょう。
また、行政書士と宅建士は試験範囲に重複があるので、より効率よくダブルライセンスを狙えます。
2.ファイナンシャルプランナー(FP)
ファイナンシャルプランナー(FP)はお金の専門家です。資産運用や相続、不動産など生活に身近なお金の問題に対して、解決策を提案する仕事・資格です。
不動産業は顧客の資産運用に密接に関係します。ダブルライセンスであれば、資産運用も任せられる不動産のエキスパートとして活躍できるでしょう。
ファイナンシャルプランナーの試験科目には不動産の分野があるので、宅建士であれば資格取得が有利と言えます。
3.マンション管理士
マンション管理士は国家資格のひとつで、管理組合に対してマンショントラブルの解決を提案するアドバイザーです。
ダブルライセンスであれば、マンション管理にも強い宅建士として活躍できます。特に独立開業する方であれば、不動産取引からマンション管理業務までワンストップで行えるのが強みになります。
まとめ
宅建士として独立開業するためには、「宅建士(宅地建物取引士)」と「宅地建物取引業免許」の2つの資格が必要です。
さらに、独立するにあたって宅建士の資格登録・交付の申請手数料や保証金、事務所の開設費用などさまざまな出費があります。独立にかかる費用相場は300~400万円が相場です。
しかし、独立すれば自由な働き方だけでなく、年収1,000万円以上の高収入を目指せます。これから宅建士の取得を考えている方は、ぜひ独立開業も目指してみてください。