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司法試験合格後の司法修習

目次

司法修習とは

司法修習とは

司法試験に合格したら、すぐに実務家になれるわけではありません

司法試験合格後は、1年間の司法修習で実務を勉強なければなりません。

司法修習は、法曹資格を得るために必要な、裁判所法で定められた法曹教育制度です。司法修習は、弁護士・検事・裁判官のいずれに進む者に対しても同じ課程で行われます。

司法修習生の流れ

修習生登録:9月

修習生登録

司法試験の合格発表が、例年9月にあります(2023年度以降の試験日程変更に伴い、それ以降は、4月登録など、時期変更の可能性があります)。

合格発表後、約1週間の短期間に司法修習生として登録します。

分野別実務修習は全国の地方裁判所所在地で実施されるので、その際に配属地の希望を出すこともできますが、最高裁判所が最終決定をしますので、希望が通るとはかぎりません。

その後、白表紙という司法修習で使用する教材と事前課題が送られてくるため、12月の司法修習開始までにやっておかなければなりません。事前課題は、司法試験までに勉強した知識だけではなく、今までの考えとは異なる部分がでてくるため、白表紙を見ながら解いていきます。また、導入修習中はスケジュールが詰まっているので、十分な勉強時間の確保が難しくなります。導入修習開始後すぐに「即日起案」が実施されるので、事前準備をしておくことが必要です。


ちなみに2021年の導入修習(第75期)は、コロナの影響でずれ込み、11月15日~12月7日までで、オンライン方式になっています(第74期もオンライン方式でした)。

採用発令:11月

採用内定の辞令及び分野別実務修習の修習先が記載された書類が到着します。

採用発令

導入修習:12月

導入修習

導入修習は、修習所で約1か月にわたり講義・演習形式の修習を受けます。この導入演習が終われば、修習生は全国にある各修習地で修習を受講します。司法修習生は、次の分野別実務修習の第1クール開始日(12月)までには修習地への移動が必要です。

また、裁判官・検察官を目指す方は、「即日起案」での評価・点数が任官に影響しますし、弁護士については、弁護士事務所への入所や、留学の際に海外のロースクール入学にも影響します

起案については、「民事事件」「刑事事件」「検察」「民事弁護」「刑事弁護」の5科目があり、それぞれ裁判官・検察官・弁護士の立場に立って、判決や準備書面などの法律文書を作成します。

分野別実務修習:1月~7月

分野別実務修習は採用発令の時に通知された修習地にて行われます。

「民事裁判」、「刑事裁判」、「弁護」、「検察」といった配属庁に4クールに分かれ、各配属庁で約2か月の研修を受けます。どの時期にどの配属になるかはクラスによって異なります。それぞれで、起案をすることになるので、導入修習で学んだことが、ここで役に立ちます。

「民事裁判」・「刑事裁判」:

「民事裁判」・「刑事裁判」

裁判所では、地方裁判所の民事部刑事部に数人ずつ配属になされ、裁判傍聴、事件の検討・起案を行います。傍聴の合間に起案することになるので、とても忙しくなります。

■民事裁判

「民事裁判」では、事前に記録を検討し、その上で、弁論準備手続き弁論の傍聴を行います。そして、その前後に、担当裁判官との議論・質疑や起案を行うこととなります。

起案については、割り振られた個々の事件について、①主張整理を行うもの、②主要な争点についての事実認定をまとめるもの、③和解条項案を考えるもの、④法的問題点を調査するものなどがあり、判決全文の起案は課せられないことが多くなっています。

■刑事裁判

「刑事裁判」は、基本的に民事裁判と同じです。

起案については、主要な争点についての事実認定をまとめるのものが主となります。また、模擬裁判をしたり、家庭裁判所での修習や、令状修習も行われます。

任官を考えている人には、特に重要なカリキュラムです。裁判官がどのような証拠に基づいて事実認定を行っているのか、気を付けてみておきましょう。

検察

「検察」では、ひとりひとりに現在進行形で動いている実際の事件を検察官と同様に割り振られ、検察庁に送検されてから終局処分に至るまで、実際に操作していきます。

被疑者の取り調べや、捜査依頼の電話、供述調書の作成などの必要な捜査を行い終局処分(起訴・不起訴の場合は起訴に必要な書類・証拠の整理)を行うことが目標となります。補習地によっては、指導担当の検事が付き、議論をしたり、検察官が扱う書面の書き方等について指導を受けることもあります。

検察では、多くの修習生が一室に集められますので、交友関係が広がる一方、積極性によって経験経験内容に差異が生じやすいので、積極的にいろいろ経験させてもらうようにしましょう。

検察

弁護

弁護

「弁護」では、それぞれ配属地の弁護士事務所に配属されます。たいてい一弁護士事務所に修習生が1人ずつ受け入れられます。指導担当弁護士の事務所に通い、指示に従って起案・傍聴を行います。

内容については、民事事件・刑事事件とには分かれておらず、指導担当弁護士が通常扱っている事件の種類によって、内容は様々です。基本的には、法律相談の同席・訴状や答弁書、申告書等の書面の起案を添削してもらったり、法廷へ同行したりします。指導弁護士と一緒に、事務所だけではなく、裁判所、検察庁、弁護士会、拘置所など色々な場所に行きます。三者のなかでも、一番動きが多くなります。また、最低1件は刑事事件を経験することとされています。自ら積極的にやりたいことを提案していくことも大事でしょう。

集合修習(A班:8月~9月,B班:10月~11月)

分野別収集が修了したあと、A班は先に2か月間司法修習所で、実際の記録をもとに事件処理を総合的に学びます

ここでは、「民事弁護」・「刑事弁護」・「民事裁判」・「刑事裁判」・「検察」の5科目ついて、起案模擬裁判があります。(B班は、この時期先に選択修習を行うこととなり、その後集合修習の順番になります)

起案については、1日かけてみっちり行われるハードな内容になっているため、ここで二回試験に対応できる学力をしっかり身につけることになるでしょう。

集合修習

選択型実務修習(A班:10月~11月、B班:8月~9月)

選択型実務修習

選択型実務修習とは、約2か月間で4つのプログラムの中から自分で興味のあるものを選んで組み合わせて修習するものです。

選択できるプログラムは2週間程度の期間のものが多いので、大半の修習生は、いくつかプログラムを選択して行います。

1.全国プログラム
 研修所が設置しているプログラムです。全国の修習生対象で、開催地も全国各地で行われます。例えば、地方配属の修習生が東京の案件を多く取り扱う事務所で修習したり、逆に地方で公設事務所に研修に行ったりします。

2.自己開拓プログラム
 修習生個人が自分で企業や官庁にかけあい、修習先を見つけるプログラムです。ある程度実績がある修習先でないと受け入れにくいため、大企業や官庁が修習先になることが多いようですが、自己で会社と交渉するのは容易ではありませんのでほとんど使われていないようです。

3.個別プログラム
 各配属地の裁判所・検察・弁護士会が設置しているプログラムで、分野別修習の補完と発展を目的としています。弁護士会では、セミナーを行ったり、裁判所であれば、特別な部署を見学したり、分野別実務修習の延長と考えていいでしょう。

4.ホームグラウンド修習
 弁護修習で配属された弁護士事務所で弁護修習の続きをするプログラムです。ほとんどの修習生がこのプログラムを組み込むことが多いようです。これにより、弁護修習の時に関わった事件の顛末が確認でき、弁護士としての一連の流れを疑似体験できます。

・司法修習生考査(二回試験):11月

修習過程をすべて修了したら、そのしめくくりとしてここなわれる最後の難関、二回試験となります。

正式名称は、「司法修習生考査」ですが、司法試験につづき二回目に行われる試験なので、「二回試験」と呼ばれています。

司法修習生考査(二回試験)

二回試験の科目は、「民事弁護」・「刑事弁護」・「刑事裁判」・「検察」の5科目で、試験は起案方式で行われます。

試験時間は、1日1科目で全部で5日間、昼食時間を含め1科目につき7時間半と長時間ですが、多くの受験生にとっては時間に余裕はありません。途中答案に対する評価は、司法試験よりも厳しくなります。この試験に合格して初めて法曹になることができます。5日間連続で行われるため、高い集中力が必要となります。

二回試験の合否は、ほとんどの修習生が合格し、不合格者は例年1~2%です。不合格者の番号のみが発表されます。ほとんどの修習生が合格するのは、決して二回試験が簡単だからなわけではありませんので、油断は禁物です。数名の不合格者とならないために、緊張感を持って試験に挑みましょう。司法試験のようにインターネットで発表はされません。番号の掲示は写真撮影が禁止されているので、番号を確認するには司法研修所に直接行くか、友達などに頼むことになります。

二回試験では、科目ごとに100ページ前後の事件記録が配布され、それを読み込んで設問内容に応じた分析事実認定書面作成を行います。

民事裁判科目

与えられた民事事件の事件記録をもとに、民事判決を起案します。2つの記録のうち、1つについては要件事実に関する起案をします。もう1つの事件記録については、事実認定を行います。

刑事裁裁判科目

与えられた刑事事件をもとに刑事判決を起案します。事実認定だけではなく、量刑判断についても起案する場合もあります。

検察科目

与えられた検査記録をもとに終局処分を起案します。刑事訴訟手続きに関する問題が出されることもあります。

刑事弁護科目

与えられた刑事事件の事件記録をもとに、弁護要旨を起案します。

禁止事項に気を付ける

禁止事項に気を付ける

二回試験には、「これを書いたら一発アウト」という禁止事項があります。


起案するときには、以下の禁止事項に気を付けて起案しましょう。

刑事弁護:「被告人の供述が信用できないから被告人は有罪」、「被告人が無罪主張しているのに有罪を前提として弁護する」


民事裁判:「事案を4類型に分類、さらに分類に応じた論じ方をしないといけないが、それをしていない」

さらに、答案用紙には二つの穴があいており、これを試験時間内に紐でしばっていないとそれだけで一発不合格となります。

司法修習生の給与

司法修習生は、国家公務法が適用されるので、その身分は「公務員」になります。

2011年に廃止されていた給与制度ですが、2017年の法改正により、修習生にも給与が再び支払われることになりました。

新制度における給付金は、月額13万5000円と一律です。住居費がかかる場合は、3万5000円を上限に住居手当がこれに加算されます。

中断していた時期と比べれば改善しているとはいえますが以前の支給額より低く、全国各地で司法修習を受けるための引っ越し費用などの負担があるためこの金額で十分とは決していえず、課題は残っています。

司法修習生の給与

司法修習生の就職活動

司法修習生の就職活動

司法修習を修了した後の司法修習生の進路を見てみましょう。

72期司法修習修了者 1,487人の就職状況は下表のようになっています。

72期(2020年調査)
弁護士登録者1,256
裁判官75
検察官65
弁護士未登録者91
司法修習者の就職状況

弁護士に比べ、裁判官・検察官は狭き門となっています。

そのため任官を目指す人は、司法試験に加え、二回試験も上位で突破する必要があります。裁判官になりたい人は最高裁判所の人事課に、検察官を希望する人は法務省の人事課に任官希望を出し、採用選考をパスすれば裁判官・検察官として任官できます。弁護士になりたい人は、自分が仕事しようとする地域を管轄する弁護士会に入会の届けを提出して登録します。登録が済めば弁護士としてすぐに活動できる点が、裁判官や検察官と違うところです。

裁判官や検察官は公務員ですので定年があります。最高裁判所・簡易裁判所は70歳その他の裁判官は65歳が定年とされています。弁護士には定年がありませんので、裁判官や検察官の中には定年後に弁護士登録し、弁護士として活躍する人もいます。

司法試験合格者説明会

司法試験合格後進路に迷っている人は、
法務省より開催される司法試験合格者説明会に参加するとよいでしょう。

就活時期については、どの法律事務所で働くかによって就活時期が異なります。司法試験合格後の6月を目途に開始する人が多いですが、大手法律事務所や外資系法律事務所などは合格を待たずに内定を出す傾向にあるので、それらを目指す人は早い時期からの就職活動を始める必要があります。中小規模の事務所や地方の法律事務所は、それより遅れて合格発表前後に採用が開始されます。この他にも、通年で採用している法律事務所もあります。採用活動は試験合格後の司法修習中も実施されており、希望する内容により時期も様々です。

各事務所により行う業務も違うため、自分がやりたいことをよく考えて事務所を決めることが大事です。先輩からのアドバイスを受けたり、信頼できる仲間がいるような自分に合った事務所選びをしましょう。

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