「予備試験の論文式試験って、科目ごとに配点が違うの?」
「配点を知って、効率よく得点を稼ぐ科目を見極めたい」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
予備試験の論文式試験は、合計600点満点で実施され、科目群によって配点の比重が大きく異なります。
配点の内訳を正しく理解しないまま学習を進めると、時間配分を誤り、得点効率の悪い勉強になってしまう恐れがあります。
この記事では、予備試験論文式試験の科目別配点を詳しく整理したうえで、各科目の出題内容、選択科目ごとの特徴、そして直近3年間の合格点の推移まで、学習計画に直結する情報を網羅的に解説します。
予備試験論文式試験の科目構成
予備試験の論文式試験は、大きく分けて3つのグループの科目で構成されています。
- 法律基本7科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)
- 選択科目(倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)から1科目選択)
- 法律実務基礎科目(民事・刑事)
短答式試験では出題されない選択科目と法律実務基礎科目が加わる点が、論文式試験の大きな特徴です。短答式試験を突破した受験生であっても、この2分野の対策が手薄だと論文式試験で苦戦する傾向があります。
予備試験論文式試験の科目別配点
論文式試験の科目別配点は、次のとおりです。
| 科目群 | 科目 | 配点 |
|---|---|---|
| 法律基本7科目 | 憲法 | 50点 |
| 行政法 | 50点 | |
| 民法 | 50点 | |
| 商法 | 50点 | |
| 民事訴訟法 | 50点 | |
| 刑法 | 50点 | |
| 刑事訴訟法 | 50点 | |
| 選択科目 | 1科目選択 | 50点 |
| 法律実務基礎科目 | 民事実務基礎 | 100点 |
| 刑事実務基礎 | 100点 | |
| 合計 | 600点 | |

配点の比率を分野ごとにまとめると、法律基本7科目が合計350点(約58.3%)、選択科目が50点(約8.3%)、そして法律実務基礎科目(民事・刑事)だけで合計200点(約33.3%)と、全体の3分の1を占めています。
「基本7科目さえ固めれば十分」と考えて実務基礎科目の対策を後回しにすると、配点の大きさゆえに合否を分けるポイントを落としてしまいかねません。
法律基本7科目で問われる内容
各科目でどのような力が問われるのか、概要を押さえておきましょう。
| 科目 | 主な出題内容 |
|---|---|
| 憲法 | 人権分野の違憲審査基準の当てはめ、統治分野の制度理解 |
| 行政法 | 行政処分の適法性、行政事件訴訟法の要件論 |
| 民法 | 契約・物権・家族法など、事案に応じた要件事実の整理 |
| 商法 | 会社法を中心とした機関設計・株主権・組織再編 |
| 民事訴訟法 | 訴訟要件、既判力、証明責任などの手続法的思考 |
| 刑法 | 構成要件該当性・違法性・責任の各段階の当てはめ |
| 刑事訴訟法 | 捜査手続の適法性、証拠法、公判手続の理解 |
いずれの科目も、単なる知識の暗記ではなく、事例に対して条文・判例をどう適用するかという「当てはめ」の作法が評価対象になる点で共通しています。
選択科目8科目の特徴比較
選択科目は配点こそ50点と単一科目分ですが、選ぶ科目によって学習負担や対策のしやすさが大きく変わります。8つの選択肢の特徴を整理すると、次のようになります。
| 選択科目 | 特徴 |
|---|---|
| 倒産法 | 民法・民事訴訟法との関連が深く、実務的な出題が多い。受講者数が多く教材も充実 |
| 租税法 | 計算要素を含む独特な出題。税務系の仕事に関心がある人と相性が良い |
| 経済法 | 独占禁止法が中心。判例知識の運用が問われる |
| 知的財産法 | 特許法・著作権法が中心。理系出身者に人気がある傾向 |
| 労働法 | 受験者数が多く、実務的関心からも選ばれやすい定番科目 |
| 環境法 | 行政法の知識を応用しやすいが、対策教材はやや少なめ |
| 国際関係法(公法系) | 国際法分野。受験者数は少数派 |
| 国際関係法(私法系) | 国際私法分野。受験者数は少数派 |
労働法・倒産法は受験者数が多く、予備校の教材・過去問解説が充実している一方、国際関係法などマイナー科目は情報が少ない分、独自に学習を組み立てる負担が大きくなる傾向があります。「対策のしやすさ」と「実務との関連性」の両方を基準に選ぶのがおすすめです。
法律実務基礎科目(民事・刑事)とは何か
法律実務基礎科目は、法律基本7科目とは性質の異なる出題がされる分野です。
- 民事実務基礎:要件事実論(訴訟でどちらが何を主張・立証すべきか)、事実認定、民事訴訟の手続の流れ、法曹倫理
- 刑事実務基礎:捜査・公判手続の流れ、事実認定、証拠の評価、法曹倫理
これらは大学の法学部の授業だけでは十分にカバーされないことが多く、予備試験・司法試験特有の対策が必要な分野です。配点200点という比重の大きさを踏まえると、基本7科目の学習が一巡した段階で早めに着手し、過去問演習を重ねておくことが得点安定につながります。
配点から見える学習優先度のポイント
①法律実務基礎科目は早期から着手する
法律実務基礎科目(民事・刑事)は、要件事実や事実認定、法曹倫理など、学部の授業だけではカバーしにくい独特の出題分野です。配点200点という比重の大きさを踏まえると、基本7科目の学習が一巡した段階で早めに着手し、過去問演習を重ねておくことが得点安定につながります。
②選択科目は得意分野・実務での関連性で選ぶ
選択科目は配点こそ50点と単一科目分ですが、選択科目次第で学習負担が大きく変わる点に注意が必要です。倒産法や労働法は実務的な出題が多く教材も充実している一方、国際関係法などは対策教材が少ない傾向にあります。将来のキャリアとの関連性も踏まえて選ぶとよいでしょう。
③基本7科目は「守りの科目」として安定させる
基本7科目は1科目あたりの配点は50点ですが、7科目合計では350点と全体の過半数を占めます。1科目に極端な苦手を作らず、全科目で一定水準の答案を書けるようにすることが、総合点を安定させる近道です。
論文式試験の合格点の推移(直近3年間)
論文式試験の合格ラインは、毎年固定された絶対点ではなく、その年の受験者層の答案レベルに応じて相対的に決まる仕組みです。直近3年間の実績を見てみましょう。
| 年度 | 合格点 | 得点率 | 採点対象者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和5年 | 245点 | 約40.8% | 2,544人 | 487人 | 約19.1% |
| 令和6年 | 245点 | 約40.8% | 2,617人 | 462人 | 約17.7% |
| 令和7年 | 240点 | 約40.0% | 2,603人 | 457人 | 約17.5% |
3年間を通して見ると、得点率にしておおむね40%前後で合格ラインが推移していることが分かります。600点満点中240点前後と考えると、決して満点を狙う試験ではなく、大きく崩れる科目を作らないことが合格への近道であることが、この推移からも裏付けられます。
一方で、合格者数・合格率はわずかに減少傾向にあり、年々競争がやや厳しくなっていることもうかがえます。最新の合格点は必ず法務省の発表資料で確認するようにしましょう。
論文式試験当日の時間配分の考え方
配点を理解したら、次に意識したいのが試験当日の時間配分です。予備試験の論文式試験は科目ごとに解答時間が区切られているため、配点の大きさに応じて答案構成にかける時間を調整する練習が欠かせません。
- 答案構成(10〜15分目安):問題文を読み、論点を洗い出し、論述の骨格(要件→当てはめ→結論)を紙面に整理する
- 答案作成(残り時間):構成に沿って文章化する。途中で論点の抜けに気づいても、構成の骨格自体は変えずに加筆する形で対応する
- 見直し(可能であれば数分):誤字脱字や、設問に正面から答えられているかを最終確認する
配点が大きい法律実務基礎科目(100点科目)では、部分点を積み重ねる意識を持ち、分からない論点があっても白紙で終わらせないことが得点を最大化するコツです。
科目別・学習時間配分の考え方
配点比率をそのまま学習時間の配分に当てはめるのは早計ですが、一つの目安として、次のような考え方が参考になります。
| 科目群 | 配点比率 | 学習時間配分の考え方 |
|---|---|---|
| 法律基本7科目 | 約58% | 学習の土台。全科目まんべんなく、苦手を残さない |
| 法律実務基礎科目 | 約33% | 基本科目が固まった段階で重点投入。配点比率以上に手厚く |
| 選択科目 | 約8% | 基本科目・実務基礎科目の学習に一区切りついてから着手 |
配点比率だけで見ると法律実務基礎科目は33%ですが、学部の授業でカバーされにくく、対策の絶対量が不足しがちな分野であるため、配点比率以上の時間を割り当てて早期から対策する受験生が多く見られます。
よくある質問
Q. 1科目だけ極端に低い点数でも、総合点で合格できますか?
予備試験の論文式試験には、司法試験本試験のような科目別の厳密な足切り制度は設けられていませんが、あまりに突出して低い科目があると、他の科目でその分を挽回する必要が生じ、結果的に総合点で不利になります。極端な苦手科目を作らないことが基本戦略です。
Q. 選択科目はいつ決めるべきですか?
基本7科目の学習が軌道に乗り始めた段階(多くの受験生は学習開始から半年〜1年程度)で決めるのが一般的です。あまり早く決めすぎず、実際に入門講座や体験授業を受けてから相性を確認することをおすすめします。
Q. 法律実務基礎科目は独学でも対応できますか?
市販の教材も存在しますが、要件事実論など独特の考え方が多いため、予備校の入門講座や単科講座を部分的に活用し、答案の「型」を早期に身につけることをおすすめします。
Q. 論文式試験で科目別の足切り(最低ライン)はありますか?
予備試験の論文式試験は、司法試験本試験のような明確な科目別の最低ライン制度は公表されていません。ただし、あまりに突出して評価の低い科目があると、総合順位に大きく影響するため、実質的には「極端に低い評価を避ける」ことが足切り対策になります。
Q. 配点の大きい実務基礎科目から先に勉強すべきですか?
法律実務基礎科目は、法律基本7科目の知識(特に民法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)を土台として理解する分野が多いため、基本科目の学習を先行させたうえで、並行または後続で着手するのが一般的な進め方です。配点の大きさから「早期対策が重要」ではありますが、「最初から手を付けるべき」というわけではない点に注意しましょう。
論文式試験の前段階「短答式試験」の配点も確認しておこう
論文式試験に進むには、まず短答式試験(270点満点)を突破する必要があります。短答式試験の科目別配点や、直近の合格点(足切りライン)の推移については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて確認しておくことをおすすめします。
配点を答案戦略に落とし込む
配点表は、勉強時間をどの科目に配分するかを決める基準です。全科目を均等に勉強するのではなく、基本7科目は安定して得点できる分野を作り、選択科目は過去問で出題傾向を確認して答案の型を準備します。試験日・配点・出題科目は年度の受験案内で変わる可能性があるため、最終的には法務省の公式案内を確認してください。
まとめ
予備試験論文式試験は、法律基本7科目(350点)、選択科目(50点)、法律実務基礎科目(200点)の合計600点満点で構成されています。直近3年間の合格点は240〜245点、得点率にして約40%前後で推移しており、満点を狙うのではなく大崩れを防ぐことが重要な試験であることが分かります。
特に配点の大きい法律実務基礎科目を早期から対策し、基本7科目で大きな失点を作らないことが、合格ライン突破のカギとなります。配点の内訳を意識した計画的な学習で、効率よく合格を目指しましょう。

