「予備試験と公認会計士試験、どちらの方が難しいのだろう」
どちらも社会人・学生問わず人気の難関資格ですが、試験の性質はかなり異なります。
この記事では、制度上の違いと難易度の比較軸を整理し、進路選択の参考情報を提供します。
試験制度の違い
| 予備試験 | 公認会計士試験 | |
|---|---|---|
| 受験資格 | 制限なし(誰でも受験可) | 制限なし(誰でも受験可) |
| 試験構成 | 短答式→論文式→口述式の3段階 | 短答式→論文式の2段階 |
| 科目分野 | 法律科目のみ | 会計学・監査論・企業法・租税法など |
| 合格後の位置づけ | 司法試験の受験資格を得る | 実務経験等を経て公認会計士登録 |
どちらも受験資格に制限がなく、誰でも挑戦できる点は共通しています。一方で、予備試験は司法試験の「入り口」に過ぎないのに対し、公認会計士試験は合格すれば(実務要件等を満たせば)それ自体が資格取得に直結するという違いがあります。
合格率で見る比較
令和7年の予備試験の最終合格率は、出願者数15,764人に対して最終合格者452人と、約2.9%という極めて低い水準です。
公認会計士試験の合格率は、近年おおむね7〜10%程度で推移する年が多いとされています。単純な合格率の数字だけを見れば、予備試験の方が低い水準にあるといえます。
ただし、これは母集団の違いも影響しています。予備試験は司法試験という次のステップに進むための試験であるため、最終合格まで到達するには司法試験・司法修習という後続のハードルも見据える必要がある点に注意しましょう。
出願者数・合格者数の比較
二つの試験の直近の数値を並べると、規模感の違いが見えてきます。予備試験の数値は本記事で紹介した令和7年の数値、公認会計士試験は公認会計士・監査審査会が公表した令和7年試験の数値です。
| 項目 | 予備試験(令和7年) | 公認会計士試験(令和7年) |
|---|---|---|
| 出願者(願書提出者)数 | 15,764人 | 22,056人 |
| 最終合格者数 | 452人 | 1,636人 |
| 出願者に対する最終合格率 | 約2.9% | 7.4% |
| 合格者の平均年齢 | ― | 24.6歳 |
合格者数を見ると、公認会計士試験の方が約3.6倍の人数が合格しています。ただし、予備試験は合格しても司法試験が待っており、公認会計士試験は合格後に実務経験と修了考査が必要という違いがあります。「合格率の低さ」と「資格取得までの道のり」は別の問題として整理する必要があります。
求められる能力の違い
予備試験は法律の条文解釈・論理的な論述力が中心であるのに対し、公認会計士試験は会計・監査・税務にまたがる幅広い実務知識と、複雑な計算処理能力が問われます。
- 予備試験:法的三段論法による論述力、条文・判例の体系的理解
- 公認会計士試験:財務諸表分析、監査手続の理解、税務計算の正確性
「言葉で論理を組み立てる」ことが得意な人は予備試験、「数字を正確に扱う」ことが得意な人は公認会計士試験との相性が良い傾向があります。
合格後のキャリアの広がり方の違い
予備試験合格はあくまで通過点であり、司法試験合格・司法修習を経て初めて弁護士等になれます。一方、公認会計士試験は合格後、実務経験(業務補助等)と実務補習を経て公認会計士として登録できる点で、資格取得までの道筋がやや異なります。
なお、公認会計士は税理士登録も可能な資格であり、税務分野へのキャリアの広がりを持つ点も特徴の一つです。
試験科目・出題形式の違いを詳しく見る
| 項目 | 予備試験 | 公認会計士試験 |
|---|---|---|
| 短答式の科目 | 憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法のほか一般教養科目 | 財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目 |
| 論文式の科目 | 法律基本科目、法律実務基礎科目、選択科目が中心 | 会計学、監査論、企業法、租税法の必須4科目+選択1科目(経営学・経済学・民法・統計学) |
| 最終段階 | 口述式試験 | 論文式試験で終了 |
| 答案の特徴 | 事案に法を当てはめて論述する | 計算問題と理論問題の両方が出題される |
公認会計士試験は、企業法や租税法など法律科目を含む一方で、財務会計論や管理会計論といった計算力を問う科目が配点の大きな部分を占めます。予備試験は、逆に文章で論理を展開する力が一貫して問われる試験です。この違いが、「どちらが難しいか」の感じ方を個人ごとに大きく変えています。
学習スタイルと向き不向きの違い
| 視点 | 予備試験 | 公認会計士試験 |
|---|---|---|
| 学習の中心 | 条文・判例・論証の理解と暗記、答案の書き方 | 簿記・会計基準の理解、計算演習、理論の暗記 |
| 得点の伸び方 | 答案の質が評価され、書き方の癖が影響しやすい | 計算問題は演習量に比例して伸びやすい |
| 試験までのスパン | 司法試験まで見据えると長期化しやすい | 専念すれば1.5〜2年程度が標準的な期間とされる |
| 後続のステップ | 司法試験、司法修習 | 実務経験(業務補助等)、実務補習、修了考査 |
どちらを目指すべきかの判断軸
- 紛争解決・法的助言に携わりたい → 予備試験(弁護士への道)
- 財務・会計のプロフェッショナルとして企業を支えたい → 公認会計士試験
- 数字と法律、両方に興味がある → それぞれの科目内容を体験講座等で確認し、適性を見極める
併願・ダブル受験は現実的か
どちらも学習範囲が広い試験であるため、同時並行での完全な併願は現実的ではありません。ただし、「まずは予備試験に挑戦し、方向転換として公認会計士試験に切り替える」といったキャリアチェンジの事例は見られます。法律と会計、どちらの学習が自分の性に合っているかを早めに見極めることが重要です。
USCPA(米国公認会計士)という第三の選択肢
予備試験・国内の公認会計士試験以外にも、USCPA(米国公認会計士)という選択肢を検討する人もいます。USCPAは受験資格に一定の単位取得要件があるものの、科目ごとの合格制で、国内の資格試験と比較して短期間での取得を目指しやすいとされる点が特徴です。ただし、日本国内での独占業務は国内の公認会計士資格とは異なるため、キャリアの方向性に応じて使い分けを検討する必要があります。
興味の方向性から選ぶという考え方
法律の条文解釈に知的好奇心を感じるか、財務諸表や数字を扱う作業に面白さを感じるかは、文系・理系の適性とも関連する部分があります。どちらの試験も相応の学習量を要するため、入門講座を実際に体験し、学習プロセスそのものへの興味が続きそうかを確かめることが、進路選択の失敗を防ぐ近道です。
自分に向いているかを確かめるセルフチェック
- 条文を読んで、事案に当てはめる作業に面白さを感じる → 予備試験の適性がある可能性
- 電卓を使って数字を正確に処理する作業が苦にならない → 公認会計士試験の適性がある可能性
- 長期間(司法試験まで)の勉強を続ける覚悟がある → 予備試験
- 比較的短期間で資格取得を目指し、社会に出て実務を経験したい → 公認会計士試験
- 法律と会計の両方に興味がある → 入門講座で両方を体験してから判断する
チェックの結果はあくまで目安です。体験講義や過去問の解説を見て、実際に「続けられそうか」を確かめることが、最も確実な方法です。
よくある質問
Q. 公認会計士は法律の知識も必要ですか?
公認会計士試験には企業法(会社法など)という科目があり、一定の法律知識が求められます。ただし、予備試験ほど広範囲の法律科目を深く学ぶわけではありません。
Q. 公認会計士から弁護士を目指す人はいますか?
少数ではありますが、公認会計士として実務経験を積んだ後に予備試験・司法試験に挑戦し、ダブルライセンスを目指す人も存在します。会計と法律の両方に強みを持つ専門家として、M&Aなどの分野で活躍する例が見られます。
Q. 学生のうちにどちらを選ぶべきか判断する方法はありますか?
それぞれの入門講座や体験授業を受けてみて、法律の条文解釈と会計・監査の計算処理、どちらの学習プロセスに面白さや適性を感じるかを確認することをおすすめします。
Q. 予備試験に合格した人は、司法試験の受験資格に期限がありますか?
司法試験には受験できる期間と回数に制限があります。最新の内容は法務省の公式サイトでご確認ください。
Q. 公認会計士試験に合格すると、法律の知識は十分に身につきますか?
企業法(会社法を中心に商法・金融商品取引法)と租税法を通じて、企業活動に必要な法律知識は身につきます。ただし、民事・刑事の紛争解決といった弁護士業務で必要となる幅広い法律知識は範囲外です。
まとめ
合格率の数字だけを見れば予備試験の方が厳しい水準にありますが、両試験は問われる能力の性質が異なるため、単純に「どちらが難しいか」を一概に決めることはできません。
自分の得意分野や将来のキャリアビジョンを踏まえ、それぞれの試験の科目内容を実際に確認しながら進路を検討することをおすすめします。

