行政書士は国家資格の中でも人気があります。
受験に年齢制限がないこと、法律を学べること、業務の幅が広いことなどから、独立開業あるいはセカンドキャリアにも向いています。
ところがChatGPTなどのAIツールが一般公開され始めてから、行政書士の仕事が奪われる、将来性はないといった論調が増加中です。
本当に行政書士の将来性は危ういのか、現状を踏まえて考察することにします。
行政書士に将来性はないのか?
行政書士は国家資格の8士業のひとつです。
弁護士、弁理士、税理士、社会保険労務士、司法書士、土地家屋調査士、海事代理士と並んで称されます。
一部では海事代理士を除いて、公認会計士、中小企業診断士、不動産鑑定士と合わせて10士業という括りもあります。
行政書士は、街の法律家としての顔を持ち、国内には51,041人、法人では1,196社が日々活動しています。
出典:単位会所在地・会員数等 | 日本行政書士会連合会
いずれにせよ行政書士は、街の法律家としての顔を持ち、国内には51,041人、法人では1,196社が日々活動しています。
この章では、行政書士の働き方と仕事内容、さらには幅広い守備範囲を誇る業務内容から、将来性の希望や見通しについて考えてみることにします。
行政書士の働き方と仕事内容
行政書士の働き方は、独立・開業のイメージが強いかもしれませんが、それも含めて資格を活かすという点では、
- 独立・開業して個人活動
- 行政書士法人に勤務
- 一般企業で法務系の仕事に従事
- 副業
- 資格学校講師
- 法律系ライター
などがあります。
仕事内容については、主に、以下のような書類の作成と代理、相談業務であり、
- 官公署に提出する書類
- 権利義務に関する書類
- 事実証明に関する書類
その他にも、「特定行政書士」「申請取次行政書士」だけが取り扱える、特定業務も含まれます。
暮らしとビジネスの両面で活躍できることが特徴です。
行政書士の仕事は幅広い
前述したように暮らしからビジネスまで、行政書士の業務の守備範囲は非常に広く、取り扱いが可能な書類だけでも10,000種類を超えます。
守備範囲の広さは新たなチャンスに巡り合いやすいとも考えられるため、一概に将来性を悲観する理由は見当たりません。
ただし、AIで処理可能な書類などは、今後、数多く出てくることは想定されますが、それは他の士業も同じことです。
行政書士の守備範囲の広さのメリットとしては、さまざまな法律の改正によって、新たに取り扱い可能な書類や手続きが増えることが考えられます。
書類の作成は行政書士の独占業務ですから、必ずしも将来性がないとは言い切れない部分があります。
業務によっては高度な知識を必要とする場合もありますし、書類作成や手続きに専門化と複雑化が進めば、行政書士の存在価値は逆に高まるはずです。
行政書士とAIの関係性
AIの普及が進むと行政書士は仕事を奪われる・・・。
そのような憶測めいた内容の記事を見かけますが、なぜ、行政書士が取り上げられるようになったのでしょうか?
AIの得意とする分野は、一般的に、
- テキストや画像、映像、音声などの解析
- 数値による予測
- ルールに基づいた判定
- データ処理
などです。
つまり行政書士の書類作成に関わる部分が、AIの得意分野にガッチリとハマってしまうことから、大部分をAIが担うことになると予想されるからです。
ただし現行法を考慮すると、あくまでも行政書士の資格を有する者が、AIに代行させることは可能かもしれませんが、無資格での書類作成が可能になることは難しいでしょう。
AIと自身の強みを活かす
AIはデータ処理に関して優秀ですし、書類作成という代書的業務はすぐにでも対応できる可能性は高いと考えられます。
ところがAIに取って代わるための法整備が不十分であるため、やはり行政書士の存在無くしては成り立たないというのが当面の見方になります。
これは行政書士の業務が法律で規定されている以上、変わることはありません。
ゆえにこれからの行政書士は、AIを上手く利用する能力が求められます。
AIをいかに導入・利用しながら自らのタスクを効率化する一方で、強みを生かした専門分野に特化し、唯一無二の存在としてサービスを提供することが、将来性ある行政書士の姿と言えそうです。
コンサルティングの将来性に期待
AIの得意分野について先ほど述べましたが、不得意とする分野は、
- 創造(ゼロベースでモノを作りだす)
- 感情や空気を読み取る
- 限られたデータからの推論
- 定性的な情報のみでの判断
といったことが挙げられます。
AIの不得意とする分野を、人間は得意とすることができるため、そこに将来性のカギがあります。
そのひとつはコンサルティング業務です。
コンサルティングの関しては、AIの不得意とするところを全てカバーすることが実務面で重要になるため、行政書士として生き残るためのスキルのひとつと言えます。
クライアントからの依頼に応じて書類を作成するという、代書的業務で終わるのでは、これまでの行政書士と何ら変わりはありません。
例えば、飲食業の新規開業にあたって、準備から営業開始まで、さらには補助金や助成金に関する助言を、一連の流れの中で担当するといった店舗のバックアップを兼ねたコンサルティングサービスなども視野に入れると良さそうです。
行政書士に期待される新分野
世の中で新しい市場が生まれると、時として行政書士の業務範囲も拡大する可能性があります。
すでに現在でも、その予兆が見え始めている市場もあるわけですが、新しい市場が広まると、行政書士の活躍の場も期待できます。
将来性ある市場
これから行政書士の新しい守備範囲として期待される市場としては、
- ドローン関連
- 外国人関連
- 申請取次行政書士
などが注目されています。
ドローンについては、飛行や操縦に関しては関連する法律に基づいて、飛行許可の申請が必要です。
飛行予定の場所などに応じて、国土交通省や警察署はともかく、関係各所への申請が常について回ります。
申請に必要な書類も多岐に渡るため、プロである行政書士の出番となります。
国内企業の外国人雇用については、出入国在留管理局への申請手続きが必要ですが、専門的なスキルを有する申請取次行政書士への注目度も高いものがあります。
他の資格や職歴で独自展開
行政書士のほかに国家資格を有していれば、強みとして新たなサービスの創出や特化した業務に従事することも可能です。行政書士の学校・予備校に通った後も継続して勉強を続け、新たな資格を得ることで行政書士としての強みもさらに増します。
語学が得意であれば、前述した外国人雇用において、雇用主に代わって申請者本人と直接、面談しながら申請に関する説明もできれば、かなり重宝される存在になります。
行政書士になる前に別の職業経験があるならば、関連のある業界に特化してサービスを提供、あるいは顧問契約を結んで経営や実務面でのサポートを行うといったこともニーズは高いと考えます。
まとめ
行政書士の将来性というテーマで、AIとのかかわり方や新しい分野、独自展開に関して解説しました。
行政書士は書類作成のプロというイメージが強すぎる傾向のためか、AIに仕事を奪われる士業として、取り上げられることが多くなっています。
街の法律家という観点からすると、個人事業主や法人においては、心強い味方であり、官公庁署向けの一切の業務を任せられる存在です。
それゆえに行政書士を必要とする個人事業主や法人が存在する限り、活躍の場が失われることはありません。