簿記論
税理士試験で必ず合格しなければならない2科目のうちの1つ。理論問題がなく、全問計算という税理士試験でも異色の科目です。
簿記論は、企業の日々の取引をどのように会計帳簿に記録し、決算数値としてまとめるかを問う科目で、財務諸表論とあわせて税理士試験の必須科目に指定されています。つまり、税理士を目指す以上、避けて通ることのできない科目です。
税理士試験は国税庁の公式サイトに税理士試験の特設ページがあり、受験資格や試験概要はそちらで随時更新されています。2023年度の税制改正により、簿記論・財務諸表論の会計科目は学歴・年齢を問わず誰でも受験できるようになったため、社会人はもちろん、大学生や、実務を通じて会計に興味を持った方の受験も増えています。
実務においても、簿記論で学ぶ仕訳・決算整理・財務諸表作成の力は、税理士としてクライアントの帳簿や申告書をチェックする際の土台になります。他の税法科目を学ぶ際にも簿記論の知識が前提になる場面が多く、税理士試験のスタート地点として最初に着手する受験生が最も多い科目です。
簿記論の試験範囲

簿記論の試験で問われる主な内容は、次のとおりです。
会計の基本概念
会計の目的、会計基準、資産・負債・純資産・収益・費用の5要素、会計処理の基本原則など、簿記論全体の土台となる考え方。
記帳・帳簿管理
仕訳、勘定科目、試算表、損益計算書・貸借対照表の作成方法と、それに関連する会計処理の一連の流れ。
固定資産・減価償却
固定資産の取得・評価と、直線法や定率法などの減価償却方法の使い分け。
棚卸資産の評価
在庫の評価方法(移動平均法、先入先出法など)と、期末棚卸高の算定。
金銭債権・金銭債務の評価
債権・債務の評価方法や、貸倒引当金の計上方法などの決算整理項目。
資本取引・資本構成
株式や出資金にかかる会計処理、資本金の増減に関する処理など。
決算・財務諸表の作成
損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の作成と、それらを用いた財務分析の基礎。
簿記論の合格率推移

税理士試験は相対評価のため、年度によって合格率が変動します。簿記論と、同じく必須科目である財務諸表論の直近2年の推移は次のとおりです。
| 科目 | 令和6年度 | 令和7年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 簿記論 | 17.4% | 11.1% | ▲6.3pt |
| 財務諸表論 | 8.0% | 31.9% | +23.9pt |
税理士試験は相対評価のため、両科目とも年度によって合格率が大きく変動することがあります。令和7年度は簿記論が厳しめ、財務諸表論が高めという対照的な結果でしたが、単年の数値に一喜一憂せず、着実な演習量の確保が合格への近道です。
簿記論の出題傾向と近年の本試験の特徴

簿記論は税理士試験11科目の中で唯一、理論問題が出題されない、全問計算の科目です。試験時間は2時間で、例年3問構成となっています。第1問・第2問は大学教授が出題を担当することが多く、仕訳問題・比較問題・相対問題など、学問的で個別論点を問う出題が目立ちます。第3問は実務家が出題を担当する傾向があり、有価証券の期末評価や減価償却費の計算といった個別論点をからめた決算整理型の総合問題が出されるのが定番です。税制改正に関わる論点も出題されやすいため、直前期には改正情報のキャッチアップも欠かせません。
簿記論最大の特徴は、制限時間内では終わらないボリュームの問題が出題される点にあります。単に「解ける」だけでは不十分で、優先して解答すべき箇所と後回しにすべき箇所を素早く見極める「取捨選択力」が合否を分けます。近年は難易度・ボリュームともに高止まりの傾向が続いており、演習量の確保がますます重要になっています。
簿記論の学習時間とスケジュールの目安

簿記論の標準学習時間は約450時間が目安とされ、税理士試験の中では中程度のボリュームです。大まかな学習の流れは次のとおりです。
基礎期
(2〜3ヶ月)
応用期
(3〜4ヶ月)
直前期
(2ヶ月)
本試験
解ける問題を見極め、部分点狙いも含めた戦略的な時間配分で解答簿記論を学ぶメリット・向いている人

税理士試験のスタート地点になる
他の税法科目を学ぶ際にも前提となる会計知識が身につくため、最初に着手する受験生が最も多い科目です。
実務で使う会計知識の土台になる
クライアントの帳簿や申告書をチェックする際の基礎力として、税理士登録後も継続的に活きる知識です。
財務諸表論との相乗効果が大きい
学習内容の関連性が非常に強いため、同時受講することで学習効率を高めやすい科目です。
こんな人におすすめ
「税理士試験を初めて受験する」「会計・簿記の基礎から着実に固めたい」という方におすすめです(必須科目のため全員が合格する必要があります)。
簿記論の学習でつまずきやすいポイント

簿記論は全問計算という明快な出題形式ですが、次の点でつまずく受験生が多く見られます。
①時間内に解き切ろうとしてしまう。簿記論は制限時間内では終わらないボリュームで出題されるのが前提の科目です。「全部解こう」とすると時間切れで得点源すら落としてしまうため、解答の取捨選択という発想の転換が必要です。
②個別論点の計算パターンの抜け漏れ。固定資産・棚卸資産・金銭債権など、決算整理項目ごとに独立した計算パターンが多数存在します。一つの論点でも抜けがあると総合問題全体で失点が連鎖するため、演習を通じて網羅的に押さえる必要があります。
③スピードと正確性の両立。ボリュームが多い分、速く解こうとするとケアレスミスが増え、正確性を優先すると時間が足りなくなるというジレンマに陥りがちです。演習・答練を繰り返し、自分に合った解答ペースを見つけることが重要です。
簿記論の攻略法

出題形式の特徴(理論なし・計算3問構成)
簿記論は税理士試験11科目の中で唯一、理論問題が出題されない、全問計算の科目です。試験時間は2時間で、例年3問構成となっています。第1問・第2問は大学教授が出題を担当することが多く、仕訳問題・比較問題・相対問題など、学問的で個別論点を問う出題が目立ちます。第3問は実務家が出題を担当する傾向があり、有価証券の期末評価や減価償却費の計算といった個別論点をからめた決算整理型の総合問題が出されるのが定番です。税制改正に関わる論点も出題されやすいため、直前期には改正情報のキャッチアップも欠かせません。
時間配分と得点戦略
簿記論最大の特徴は、制限時間内では終わらないボリュームの問題が出題される点にあります。したがって、単に「解ける」だけでは不十分で、優先して解答すべき箇所と後回しにすべき箇所を素早く見極める「取捨選択力」が合否を分けます。資料を正確かつスピーディーに読み取り、得点源となる基本論点を確実に拾い切ったうえで、応用論点は部分点狙いに切り替える判断力を、演習・答練の反復を通じて養う必要があります。
答練・演習の活用法
取捨選択力は独学では養いにくいため、予備校の答練で「時間内にどこまで解けたか」を毎回記録し、自分の弱点パターンを可視化することが有効です。間違えた論点だけでなく、時間配分の判断ミスも振り返りの対象にしましょう。
簿記論は財務諸表論と学習内容の関連性が非常に強い科目です。時間に余裕があれば、両科目を同時に受講することで、簿記の知識を二度学習する手間が省け、結果的に合格までの時間短縮につながります。独学ではこの取捨選択の感覚をつかみにくいため、多くの合格者は予備校の演習・答練を活用しています。予備校選びに迷ったら、下記のランキングもあわせてご覧ください。
簿記論の知識を実務でどう活かすか

簿記論は試験合格後も、税理士業務の土台として日常的に使い続ける知識です。
顧問先が作成した帳簿の仕訳・決算整理が適切かを確認する際、簿記論で培った判断力が直接活きます。
法人税・消費税など他の税法科目の申告書作成も、正しい決算数値があってこそ成り立つ業務です。
自計化を進める顧問先に対し、正しい仕訳や決算整理の方法を指導する場面で知識が活きます。
法人税法・所得税法など、決算数値をもとに計算する税法科目全般の理解を支える基礎知識です。
簿記論は税理士試験の入り口であると同時に、税理士としてのキャリア全体を支える最も基礎的な知識です。合格後も知識が陳腐化しにくく、実務で長く使い続けられます。
簿記論と財務諸表論の関係

簿記論と財務諸表論は、税理士試験で唯一「両方の合格が必須」とされる必須科目です。どちらも会計分野を扱う科目のため、学習内容には重なりが多く、あわせて学習することで効率的に合格を目指せます。
| 比較項目 | 簿記論 | 財務諸表論 |
|---|---|---|
| 出題形式 | 計算のみ(理論なし) | 理論・計算 |
| 令和7年度合格率 | 11.1% | 31.9% |
| 標準学習時間目安 | 約450時間 | 約450時間 |
| 出題の焦点 | 個別論点の計算処理力 | 会計理論の理解+財務諸表の作成 |
簿記論が「手を動かして計算する力」を問うのに対し、財務諸表論は「なぜそう処理するのか」という理論的な理解もあわせて問われます。学習内容が重なる部分が多いため、多くの受験生は両科目を同時に受講し、1つの知識を2科目分の得点力に変えています。
直前期の対策講座

各予備校の直前対策講座は、本試験までの限られた時間で得点力を最大化するための総仕上げ講座です。詳しい内容は以下のページでまとめています。
簿記論に関するよくある質問

簿記論は独学でも合格できますか?
独学での合格も不可能ではありませんが、簿記論最大の特徴である「時間内に解き切れないボリュームへの取捨選択力」は、実戦形式の答練を繰り返すことで身につく力です。多くの合格者は予備校の演習・答練を活用しています。
簿記論と財務諸表論はどちらから学習すべきですか?
学習内容の重なりが大きいため、多くの受験生は両科目を同時に受講しています。時間に余裕がない場合は簿記論から着手し、基礎を固めてから財務諸表論の理論学習に進む方法も有効です。
簿記論に理論問題はありますか?
簿記論は税理士試験11科目の中で唯一、理論問題が出題されない全問計算の科目です。理論の暗記が苦手な方でも計算力で得点を積み上げられます。
簿記論の知識は実務でどのくらい必要ですか?
クライアントの帳簿チェックや決算・申告書作成の土台となる知識で、税理士登録後も日常的に使い続ける最も基礎的なスキルです。
本試験で得点力を上げるための当日のポイント

簿記論は時間内に解き切れないボリュームが前提の科目のため、取捨選択の判断が得点を左右します。当日に意識したいポイントを3つ紹介します。
①最初に全問に目を通す
3問すべてにざっと目を通し、解きやすい問題・得点源になりそうな問題を先に見極めてから着手しましょう。
②深入りせず部分点を狙う
難しい論点に時間をかけすぎず、わかるところまで解答して部分点を確保し、次の問題に進む判断力が重要です。
③見直しの時間を確保する
計算ミスは大きな失点につながるため、可能な限り見直しの時間を残せるよう時間配分を計画しましょう。
他の科目もチェック
税理士試験は科目合格制です。他の科目の学習内容・攻略法もあわせてご確認ください。

