公認会計士試験は司法試験と並ぶ最難関の国家資格の一つで、専念して学習する大学生や受験浪人でも合格までに数年を要することがあります。そのため「働きながらでは無謀ではないか」と不安に感じる社会人の方は少なくありません。実際のところ、社会人受験は決して楽ではありませんが、学習時間の確保方法と受験プランの立て方次第で合格は十分に狙える範囲にあります。
公認会計士試験に必要な勉強時間の目安
公認会計士試験の合格に必要な勉強時間は、一般的に3,000〜5,000時間が目安とされています。短答式試験に約1,800時間、論文式試験に約1,200時間という内訳が示されることが多く、専念して学習した場合の受験期間は1.5〜2年程度が標準的です。
社会人の場合、平日にまとまった学習時間を確保することが難しいため、同じ3,000時間超の学習を終えるまでに専念受験生より長い期間がかかるのが一般的です。1日2〜3時間の学習を継続できたとしても、3,000時間に到達するまでには3〜4年程度を見込んでおく必要があります。無理のないスケジュールを最初に設計しておくことが、途中で挫折しないための最大のポイントです。
仕事と学習を両立させるポイント
- 通勤時間・すきま時間の活用:スマートフォンで視聴できる講義動画や一問一答形式の教材を使い、まとまった時間が取れない日でも学習を止めない工夫が重要です。
- 科目ごとの優先順位づけ:配点の大きい財務会計論・管理会計論から着手し、企業法・租税法は仕事の繁忙期を避けて重点的に学習するなど、メリハリをつけた計画が有効です。
- 退職・休職のタイミングの見極め:短答式試験に合格した後、論文式試験までの数か月間だけ休職・退職して学習に専念する社会人受験生も多く見られます。
- 通信講座の活用:通学の時間的制約がなく、倍速視聴や繰り返し受講がしやすい通信講座は、社会人受験生との相性が良い学習スタイルです。
社会人の1年間の学習スケジュール例
仕事をしながら、短答式試験(5月)と論文式試験(8月)の合格を見据えた場合の、1年間の流れの一例です。実際には、繁忙期や個人の状況に合わせて調整してください(試算のための例です)。
| 時期 | 学習内容 | 仕事との調整のポイント |
|---|---|---|
| 6〜9月 | 簿記の基礎、財務会計論・管理会計論の講義 | 夏季休暇を活用して、基礎講義を集中的に進める |
| 10〜12月 | 企業法・監査論の講義、計算問題の演習 | 年末の繁忙期に備えて、学習ペースを維持する最低限のラインを決める |
| 1〜3月 | 短答式試験向けの総復習、過去問演習 | 決算期と重なる場合は、通勤時間などの活用を強化する |
| 4〜5月 | 短答式の直前対策、模試 | 5月の第Ⅱ回短答式試験前に有給休暇の取得を検討する |
| 6〜8月 | 論文式試験の対策、答案練習 | 8月の論文式試験(3日間)に向けて、休暇の取得を早めに調整する |
社会人受験のメリットも押さえておく
社会人からの受験には時間的な制約という不利な面がある一方で、社会人経験そのものが強みになる面もあります。ビジネスの現場感覚を持って会計や税務の制度を学べるため理解が深まりやすいこと、また合格後の就職・転職活動においても「社会人としての基礎力」が評価されやすいことは、専念受験生にはないアドバンテージです。年齢や現在の環境を理由に諦める前に、まずは現実的な学習計画を立ててみることをおすすめします。
社会人の合格者は実際にどれくらいいるのか
公認会計士・監査審査会の公表資料(令和7年試験の合格者調)によると、最終合格者1,636人のうち、30歳以上の合格者は177人でした。年齢別の内訳は次のとおりです。
| 年齢区分 | 合格者数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 25〜30歳未満 | 431人 | 26.3% |
| 30〜35歳未満 | 119人 | 7.3% |
| 35歳以上 | 58人 | 3.5% |
| (参考)30歳以上の合計 | 177人 | 約10.8% |
また、同じ資料では職業が「会社員」の合格者は89人(5.4%)でした。全体から見れば少数派であることは事実ですが、社会人のままで合格している方が毎年一定数いることも確かです。「働きながらでは無理」と決めつけず、自分の状況で現実的な計画を組めるかどうかを冷静に検討することが大切です。
学習時間の確保イメージ
必要な学習時間を3,000〜5,000時間とした場合、1日あたりの学習時間によって、完了までの期間は大きく変わります。以下は、休日を含めた単純な計算による目安です。
| 平日の学習時間 | 休日の学習時間 | 年間の学習時間の目安 | 3,000時間に到達するまでの目安 |
|---|---|---|---|
| 2時間 | 6時間 | 約1,100時間 | 約2年8か月 |
| 3時間 | 8時間 | 約1,600時間 | 約1年10か月 |
| 4時間 | 10時間 | 約2,100時間 | 約1年5か月 |
平日に3時間、休日に8時間を確保するのは、仕事や家庭の状況によってはかなり厳しい水準です。まずは現実に確保できる時間を1か月単位で記録し、それをもとに合格までの期間を見積もりましょう。
平日と休日のモデルスケジュール
| 時間帯 | 平日の例 | 休日の例 |
|---|---|---|
| 朝(出勤前) | 30分〜1時間:計算問題の反復、前日の復習 | 2〜3時間:新しい範囲のインプット |
| 通勤時間 | 30分〜1時間:講義の視聴、一問一答 | (該当なし) |
| 昼休み | 15〜30分:暗記事項の確認 | ― |
| 夜 | 1〜2時間:演習、答練 | 3〜4時間:答練、過去問、総復習 |
| 合計 | 約2〜4時間 | 約5〜7時間 |
社会人受験生が陥りやすい落とし穴
- 繁忙期に学習が止まる:決算期などで学習が中断すると、復帰に苦労します。あらかじめ「最低限これだけはやる」という日課を決めておきましょう。
- すきま時間の学習に偏る:スマートフォンでの学習は手軽ですが、計算問題や答案練習にはまとまった時間が必要です。
- 短答式の合格に時間がかかりすぎる:計画が長くなるほど、短答式の免除期間(合格発表から2年)内に論文式に合格する必要があります。免除期間を意識した計画にしておきましょう。
- 家族や職場との調整をしない:学習を続けるには周囲の理解も欠かせません。試験前の休暇の取り方などを早めに相談しておくと安心です。
仕事を続けるか、休職・退職するかの判断軸
| 選択肢 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 働きながら受験を続ける | 収入が安定する。社会との接点が保たれる | 学習時間が限られ、合格までの期間が長くなりやすい |
| 論文式試験の前だけ休職・有給を活用する | 直前期に集中して学習できる | 会社の制度や理解が必要。取得できる期間は職場による |
| 退職して専念する | 学習時間を大きく確保でき、期間を短縮できる | 収入がなくなる。不合格だった場合のリスクが大きい |
退職して専念する場合は、生活費と受講料を含めた資金計画を立て、「何年目までに合格できなければ方針を見直す」といった撤退ラインを決めておくと安心です。短答式に合格してから判断する方法もあります。
費用面での工夫
- 一部の予備校の講座は、厚生労働大臣指定の教育訓練給付制度の対象コースとなっている場合があります。対象か、条件を満たすかは各予備校の公式サイトとハローワークでご確認ください。
- 通学と通信で受講料が異なる場合があるため、社会人は通信講座を中心に検討すると通学時間を節約できます。
- 早期申込や割引の制度を設けている予備校もあるため、申込前に最新のキャンペーン情報を確認しましょう。
よくある質問
Q. 何歳まで受験できますか?
公認会計士試験には年齢制限がなく、年齢・学歴・国籍にかかわらず誰でも受験できます。令和7年試験では、35歳以上の合格者も58人いました。
Q. 短答式に合格した後、論文式まで何をすればよいですか?
短答式合格後は、論文式試験に向けて答案練習と理論の暗記を進めます。論文式試験は例年8月に実施されるため、それまでの数か月間が勝負になります。仕事の繁忙期を避けて有給を取得できるよう、早めに調整しておくと安心です。
Q. 社会人経験は合格後に役立ちますか?
業界の実務経験があれば、監査や財務の実務に触れたときに理解しやすいという声があります。また、転職の際にも社会人としての基礎力は評価されやすい傾向があります。ただし、評価は個人や職場によって異なります。
公認会計士のおすすめ通信講座
公認会計士試験の学習を効率よく進めたい方には、通信講座の活用がおすすめです。
各予備校・通信講座の費用や合格率をさらに詳しく比較したい方は、公認会計士の予備校・通信講座おすすめランキングTOP6もあわせてご覧ください。

