相続税法
資産税分野に強い税理士を目指す方に人気の科目。実務直結度の高さから、税理士試験の最終科目として選ぶ受験生が多く、ハイレベルな戦いになりやすいのが特徴です。
相続税法は、人の死亡によって財産が承継される際に課される相続税と、生前の財産移転に課される贈与税について定めた法律を学ぶ科目です。「贈与税法」という独立した法律は存在せず、贈与税に関する規定も相続税法の中に定められているため、相続税法を学ぶ際には贈与税もあわせて学習することになります。
相続税法に合格していることは、資産税に強みを持つ税理士事務所への就職・転職において有利に働くことが多く、実務での引き合いも強い分野です。税理士試験の最後の科目としてあえて相続税法を選択する受験生が多いのも特徴で、経験豊富な受験生同士がぶつかり合う分、ハイレベルな戦いになりやすい科目でもあります。
相続税の課税対象は、不動産・現金・株式・有価証券など被相続人が保有していた財産全般です。相続税額は、遺産の評価額から基礎控除額等を差し引いたうえで、法定相続分に応じた累進税率を適用して算出されます。申告は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があり、財産評価や税額計算が複雑になりやすいため、税理士のサポートが特に求められる分野です。
相続税法の試験範囲

相続税法の試験で問われる主な内容は、次のとおりです。
相続税の課税対象
不動産、現金、株式、有価証券など、被相続人から相続人へ承継される財産。
財産評価
土地(路線価方式・倍率方式)や取引相場のない株式などの評価方法。相続税法の中でも特に配点の大きい分野。
相続税の計算
遺産総額から基礎控除等を差し引き、法定相続分に応じた累進税率を適用して税額を算出するしくみ。
贈与税との関係
生前贈与にかかる贈与税の規定と、相続税との関連(相続時精算課税制度等)。
申告・納付
相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う申告と納付の実務。
非上場株式の納税猶予・特例
事業承継税制など、非上場株式や事業用資産に関する納税猶予・特例措置の適用要件。
相続税法の合格率推移

税理士試験は相対評価のため、年度によって合格率が変動します。相続税法と、同じく人気の選択科目である消費税法の直近2年の推移は次のとおりです。
| 科目 | 令和6年度 | 令和7年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 相続税法 | 18.7% | 13.8% | ▲4.9pt |
| 消費税法 | 10.3% | 10.1% | ▲0.2pt |
相続税法は税理士試験の最終科目として選ぶ受験生が多く、受験生の学習レベルが総じて高いため、年度によって合格率の振れ幅が大きくなりやすい科目です。単年の数値だけでなく、複数年の推移も踏まえて学習計画を立てることが大切です。
相続税法の出題傾向と近年の本試験の特徴

相続税法の理論問題は、事例をもとにした申告手続きを問う総合問題が中心で、複数の規定を組み合わせて解答させる出題が多く見られます。難易度自体が極端に高いわけではありませんが、税制改正論点をからめた出題がされやすく、事業承継税制や小規模宅地等の特例など、毎年のように見直しが入る分野は特に注意が必要です。
計算問題では、宅地等の評価や取引相場のない株式の評価といった財産評価の分野からの出題が多く、多くの資料の中から必要な情報を正確に拾い上げる読解力・処理速度が求められます。相続税法は簿記の知識を前提としない数少ない科目のため、簿記が苦手な方でも取り組みやすい一方、財産評価特有の複雑な計算パターンに習熟する時間が必要です。
相続税法の学習時間とスケジュールの目安

相続税法の標準学習時間は約450時間が目安とされ、他の税法科目よりやや少なめですが、財産評価の演習量が得点に直結するため、計算演習に十分な時間を確保することが重要です。大まかな学習の流れは次のとおりです。
基礎期
(2〜3ヶ月)
応用期
(2〜3ヶ月)
直前期
(2ヶ月)
本試験
財産評価の配点を意識し、確実に得点できる論点から解答相続税法を選ぶメリット・向いている人

資産税分野への強みになる
相続税申告や事業承継対策など、資産税に特化した税理士事務所への就職・転職で高く評価される知識です。
簿記の知識がなくても取り組みやすい
簿記論・財務諸表論の知識を前提としない数少ない科目のため、簿記が苦手な方でも学習しやすい面があります。
標準学習時間が比較的短い
標準学習時間の目安は約450時間と、法人税法・所得税法(各約600時間)と比べてやや少なめです。
こんな人におすすめ
「将来は資産税・相続専門の税理士になりたい」「所得税法とあわせて資産税分野を強化したい」という方におすすめです。
相続税法の学習でつまずきやすいポイント

相続税法は簿記の知識を前提としない分、とっつきやすく見えますが、次の3点でつまずく受験生が多く見られます。
①財産評価の計算パターンの多さ。宅地の評価だけでも路線価方式・倍率方式に加え、貸家建付地、借地権、セットバックが必要な宅地など多数の個別パターンがあり、非上場株式の評価も類似業種比準方式・純資産価額方式など複数の方式があります。パターンを丸暗記するのではなく、なぜその評価方法が採られるのかという理屈から理解することで、初見の問題にも対応しやすくなります。
②特例・優遇制度の適用要件の混同。小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、事業承継税制の納税猶予など、税額を大きく左右する特例が数多く存在し、それぞれ適用要件が細かく定められています。要件を一つでも見落とすと計算全体が崩れるため、各特例の要件を表などに整理して正確に覚えることが重要です。
③受験生のレベルの高さに圧倒される。相続税法は税理士試験の最終科目として選ぶ受験生が多く、相対評価の中で経験豊富な受験生と競うことになります。周囲のレベルに惑わされず、自分の弱点論点を一つずつ潰していく地道な学習姿勢が合格への近道です。
相続税法の攻略法

理論対策(改正論点がからむ総合問題が中心)
理論は、事例をもとにした申告手続きを問う出題が中心で、複数の規定を組み合わせた総合問題として出題されます。難易度自体は極端に高くありませんが、税制改正論点をからめた出題がされやすい傾向があります。学校の理論集をベースに正確な暗記を進めたうえで、直前期に改正論点を重点的に確認し、演習・答練で実戦形式に慣れておくことが有効な対策です。
計算対策(財産評価の正確な積み上げが得点源)
計算は、相続が発生した場合に納付すべき相続税額を求める総合問題が出題されます。特に宅地等の評価や取引相場のない株式の評価といった財産評価の分野からの出題が多く、多くの資料の中から必要な情報を拾い、複数の評価論点を正確に積み上げていく力が求められます。簿記の知識を前提としない数少ない科目でもあるため、簿記が苦手な方にも学習しやすい面があります。
答練・演習の活用法
財産評価は資料の読み取りミス一つで大きく失点するため、答練・演習を通じて「資料のどこに注目すべきか」というパターンを体に染み込ませることが得点力向上の鍵です。間違えた問題は評価方法だけでなく、資料のどこを見落としたのかまで振り返る復習を徹底しましょう。
相続税法は理論と計算の関連性が強く、並行して学習することで定着が図りやすい科目です。本試験では応用論点が出ることもありますが、まず確実に得点すべきは学校で学ぶ基本論点です。演習・答練を繰り返し、本試験で優先的に解くべき問題を見極める判断力を養いましょう。実際にTACと資格の大原の両方に通学して官報合格を果たした方の体験記も公開しています。
資格の学校TACと資格の大原の両方に通学し、税理士試験最後の科目として相続税法を選び、見事官報合格を果たした方の体験記を掲載しています。科目選びで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
相続税法の知識を実務でどう活かすか

相続税法は資産税分野の実務に直結する科目で、税理士登録後は次のような場面で活用します。
財産評価から税額計算、各種特例の適用判断まで、相続税申告業務の中核を担う知識です。
生前贈与の活用や事業承継税制の提案など、顧客の資産承継を見据えたコンサルティングに活かせます。
不動産オーナーの顧客に対する土地評価や、譲渡所得(所得税法)との関連知識としても役立ちます。
税務面から見た遺産分割の留意点など、他士業(弁護士・司法書士)と連携する場面でも専門知識が活きます。
資産税分野は今後も相続・事業承継のニーズが見込まれる分野です。相続税法の学習で得た知識は、合格後のキャリアの選択肢を大きく広げてくれます。
相続税法と消費税法、どちらを選ぶべき?

相続税法と消費税法は、税理士試験の選択科目の中でも特に受験者数の多い人気科目です。どちらも実務での使用頻度が高い一方、学習内容の性質は大きく異なるため、以下の比較を参考に自分に合う科目を検討してみてください。
| 比較項目 | 相続税法 | 消費税法 |
|---|---|---|
| 標準学習時間目安 | 約450時間 | 約300時間 |
| 令和7年度合格率 | 13.8% | 10.1% |
| ボリューム | 中程度(財産評価の演習量が鍵) | 比較的少なめ |
| 実務での使用頻度 | 資産税・相続分野で高頻度 | ほぼすべての事務所で日常的に使用 |
| 向いている人 | 資産税・相続専門を目指す人 | 幅広い顧客層に対応したい人、短期間で合格を狙いたい人 |
資産税分野に強みを持ちたい方は相続税法、まずは実務で使用頻度の高い基礎知識を効率よく身につけたい方は消費税法が向いています。両科目とも実務での価値は高いため、時間に余裕があれば両方の合格を目指すのも有力な選択肢です。
直前期の対策講座

各予備校の直前対策講座は、本試験までの限られた時間で得点力を最大化するための総仕上げ講座です。詳しい内容は以下のページでまとめています。
相続税法に関するよくある質問

相続税法は独学でも合格できますか?
独学での合格も不可能ではありませんが、財産評価の細かい計算パターンや、毎年見直される特例制度を独学で網羅するのは負担が大きい科目です。多くの合格者は予備校の教材・答練を活用し、頻出の評価論点から優先的に演習量を積んでいます。
相続税法は簿記の知識がなくても学習できますか?
はい。相続税法は簿記論・財務諸表論の知識を前提としない数少ない税法科目で、簿記が苦手な方でも取り組みやすい科目とされています。
相続税法の知識は実務でどのくらい必要ですか?
相続税申告や生前の相続対策、事業承継の相談など、資産税分野の実務では中核となる知識です。資産税に強みを持つ税理士事務所では必須知識といえます。
相続税法はいつ受験するのがおすすめですか?
実務直結度が高く難易度も相対的に高いため、税理士試験の最終科目としてあえて選ぶ受験生が多い科目です。他の科目である程度受験経験を積んでから挑む戦略も有効です。
本試験で得点力を上げるための当日のポイント

相続税法は財産評価の資料量が多く、時間配分と資料の読み取り精度が得点を大きく左右します。当日に意識したいポイントを3つ紹介します。
①資料全体に目を通す
解答前に問題文・資料全体を確認し、財産評価のボリュームを把握してから取り組む順序を決めることで、時間切れを防ぎます。
②評価の前提条件を見落とさない
宅地の形状や利用状況など、評価額を左右する前提条件の見落としは大きな失点につながるため、資料の細部まで確認しましょう。
③得意な評価論点から着手
財産評価は論点ごとに独立して得点できるため、自信のある評価パターンから確実に得点を積み上げましょう。
他の科目もチェック
税理士試験は科目合格制です。他の科目の学習内容・攻略法もあわせてご確認ください。

